印西市の千葉ニュータウンで、初期の造成で作られた人工の池に絶滅の恐れがあるトンボが生息していることを受けて、開発を手掛けるUR(都市再生機構)は20日、開発計画を大幅に縮小し、池や周囲の現況をできる限り保存する方針を固めた。URによると、希少種の生息場所を守るために開発を見直すのは極めて異例で、保存を求める住民らの声に応えた格好だ。【井上英介】
人工池は北総線印西牧の原駅の北に広がる千葉ニュータウン(NT)第21住区の開発予定地内にあり、豪雨時に防災調整機能を果たす。一帯は利根川へ注ぐ亀成川の支流(古新田川)の水源域。1970年代の初期の造成で里山を崩し、低湿地を埋め立てる過程で池は作られ、南の上池と北の下池に分かれ、樹林で囲まれている。総面積は約9ヘクタール。
池はその後長く放置され、環境省や県から絶滅危惧種に指定されたトンボ数種が確認されている。珍しい野鳥や水草もみられ、開発前の豊かな生態系が見事に再現され、希少種の聖地として全国的に注目されている。
URは当初、上池を完全に埋め立てて芝生の公園とし、下池や緑地帯にも手を加える予定だった。これに対し、地元の住民らで作る自然保護グループ「亀成川を愛する会」(一島正四会長)が希少種生息の事実を伝え、現状の保存を要望。URは開発を中断し、学者らによる委員会を昨年5月に設け、対策を練ってきた。
URが20日公表した委員会の提言は、池と緑地帯について「ひと続きの水系で、トンボが生息できる可能性をできる限り残すべきだ。一部区域で立ち入りを制限し、市民が環境学習などを体験できる場とするのが望ましい」などとしている。
UR千葉NT事業本部は毎日新聞の取材に「提言を重く受け止める」とし、上池は原則として残し子どもの遊び場確保や水量維持のための最小限の工事を行う。下池にはできるだけ手を加えない方針だ。
提言について、保存を要望してきた「愛する会」は「公園予定地だけでなく水系を一体ととらえ、環境の多様性確保や今ある自然を生かすなど踏み込んだ内容で、当会の願いを酌んでいただいた。具体化する際にはしっかり協力したい」と歓迎している。
千葉NTは県とURの連携で1969年に開発が始まり、2013年度に全事業が終了する。計画では印西、船橋、白井3市にまたがる計1933ヘクタールに24の住区を整備し、第21住区(140ヘクタール、2000戸)は最後を締めくくる開発。目標人口は14万3300人だが、現状では約9万人にとどまっている。