◇補助金の賛否、真っ二つ
北総鉄道への補助金支出の是非を巡り、白井市議選(定数21)がヒートアップしている。補助金賛成派と反対派は告示前の市議会で拮抗(きっこう)していたが、告示後の候補の賛否も真っ二つに割れている。補助金支出を専決処分した市長が市議会の不信任決議で自動失職する事態となった白井市。選挙結果は今後の市政の行方に影響しそうだ。【早川健人】
「おはようございます」「行ってらっしゃい」。北総線白井駅前で候補者たちが自分の名を書いたのぼりを並べ、通勤客に頭を下げ続ける。4年前より4人多い28人が立候補。半数近くが同駅前に集まった朝もある。ある現職候補は言う。「新人が9人も出て、みんな危機感でいっぱい。今まで駅立ちしなかった現職も来ている」
県と北総線沿線6市は09年11月、年間3億円の補助金を北総鉄道に支出して運賃を平均4・6%値下げする枠組みに合意。白井市の負担は年3450万円だ。ところが、市議会の議決は10対9で支出反対が賛成を上回り、今年3月までに横山久雅子前市長(60)提案の予算案から補助金を計3回削除した。前市長は昨年10月、専決処分で補助金を出した。
市議選の結果次第では、同市の北総線問題への今後のスタンスが大きく変わる。このため、毎日新聞は候補者全員に補助金の是非と前市長への支持・不支持を聞いた。
候補28人のうち補助金支出に明確な賛否を示したのは26人で、13人ずつ真っ二つに割れた。残り2人の新人は「補助金は争点ではない」「値下げ率が低すぎる。現状の補助額でさらに値下げされるなら賛成」とそれぞれ回答した。
市民の反応はさまざまだ。東京都内に通勤する男性会社員(59)は「白井市だけ負担しないのは不公平になる」と支出に賛成する。これに対し、高校生の長男が北総線を利用する主婦(48)は「値下げ分を市税として納めるのなら、本当の値下げではない」と反対。北総線を利用しない農業の男性(49)は「電車に乗らない市民も負担するのはおかしい」とやはり反対する。
市議会と前市長の対立関係は複雑だ。横山氏は北総線値下げを求める市民団体の事務局長を務め、08年11月の市長選で初当選した。補助金支出案では選挙で応援した市議たちが反対し、対立候補を推した市議たちが賛成する“ねじれ”が生じた。だが、今年3月の市長不信任案には補助金賛成派、反対派とも大半が賛成し、16対4で可決した。横山氏は議会を解散せずに自身の自動失職を選び、5月22日の市長選で返り咲きを狙う。
その横山氏については、不支持の候補(18人)が支持(2人)を上回る。ただし、「未定」も8人に上る。出直し市長選では補助金賛成派、反対派のいずれもが対抗馬の擁立を目指している。
北総線問題で迷走する市政にうんざりしている有権者も少なくないようだ。自営業の男性(55)は「市長選が終わっても不毛な対立が続くことだけは避けてほしい。市の財政再建など課題は山積しているはずだ」と言う。